中村酒造について

昭和30～40年代、日本は戦後の食料難から脱却し、原料米が十分に確保できるようになりました。高度経済成長期の旺盛な消費も追い風となり、日本酒業界はかつてない好況を迎えました。しかし、この時期に日本酒は工業製品のような大量生産・大量消費の道を歩み始めます。本来、日本酒には「主食である米の恵みへの感謝」や「地域文化としての酒造り」という大切な価値観がありました。それが次第に生産効率やコスト重視の姿勢に取って代わられてしまったのです。この変化は、日本酒本来の魅力を薄れさせ、消費者が日本酒から遠ざかる一因となったと私たちは考えています。その結果、日本酒市場は長い間低迷が続きました。しかし近年、「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録されるなど、日本酒を「食」と「文化」の両面から見直す動きが広がっています。

中村酒造は、このような流れを踏まえ、「地酒」の価値を再認識し、新たな「地酒」の概念を創造・発信することが、日本酒の復興に必要だと考えています。私たちが考える「地酒」とは、「地域で育まれた原料（米）を、その地域の技術と気候風土で醸すこと」です。酒造りは本来、農業から発展した1.5次産業であり、地域の資源を磨き、価値を高め、世界に発信することが私たちの使命だと信じています。この理念のもと、私たちは日々、心を込めた酒造りに取り組んでいます。